里山の古民家で・・・その後 夫婦共に還暦を過ぎ「終の棲家は古民家でどう?」という家内の一言から、一気に古民家住まいの計画が進行して現実のものとなり、4年目を迎えました。
日本は四季折々の表情を持っている美しい国。私としては、その四季を楽しみながら、自然にさからわずゆっくりと暮らしたいという思いでした・・・ しかしながら、今度は家内の「古民家でうつわ屋を、という夢」への想いがムクムクと沸いてきて、その実現に向けた行動を起こしはじめたのです。
家内は二十代の頃から器や古いものが好きで、おばあちゃんになったら老後の楽しみで器の小さなお店がしたいという夢があったといいます。 普段はゆっくりおっとりした家内が還暦を過ぎて急速に行動に移し始めたのは、家内の母が六十一歳で他界したこともあって「やるなら今。後悔のないように残りの人生を過ごしたい。」と強く思うようになったからなのでしょう。 好きな作家さんの工房を訪ねたり、気になる作家さんの展示会を見て周ったりと、忙しいけど楽しそうでした。二年間ほどの準備期間を経てオープン。
オープンすると直ぐに地元の各テレビ局、新聞、情報誌、インターネット情報などから取材を受け、放送されたり掲載されました。 お店の名前は「うつわとカフェ 青文字」。アオモジとは、早春にクリーム色の花を咲かせて野山を彩る樹木で、家内が昔から好きな樹木です。家の前にも植えてあります。 ギャラリーは家内のお気に入りの陶芸家の作品を選んで展示しています。隣の部屋は喫茶室にして、いつもジャズを流しています。ジャズ、カントリー、シャンソン、タンゴ、ファド、歌謡曲など、いろいろなジャンルのレコードとCDが6000枚ほどあるので、希望があれば自分で選んでレコードも聴けるようにしています。 私はお店のことには完全ノータッチで干渉も手伝いもしません。たくさんのお客様が来られた時は一人で大変なようですが楽しそうです。時々オーディオや音楽の話をしたいお客様が来て「ご主人と話したい」などと言われるけれど、私は一切お店には出ないことにしています。 私が協力していることは流す音楽の選曲と珈琲の焙煎。音楽歴は六十年、焙煎歴は十年くらいで結構年期が入っていますから。
ここには黒光りする柱や大きい梁に囲まれた風情ある和の空間があります。「田舎の家に帰ったような気持でくつろいでもらいたい。そんな心地よい雰囲気の中で、器の色や質感をじかに確かめて欲しい」というのが家内の願い。
女性の六十代はまだまだ若い。「老後の楽しみ」が、多忙になって「老後の苦しみ」にならぬよう、ゆっくりと楽しみながら続けてくれればよいと思っています。
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