合気会 文集 2003年度


別 れ

人との出会いは、ときめきがあっていつもうれしい。しかし、人はいつか別れの日を迎えることになる。いつ別れの時がやってくるか分からない。それは予測もせずにやってくる時もあるから、コタ家では「死」の話を息子の小太郎を交えて、日常の会話としてあっさりとやってしまう。

小太郎を可愛がってくれていた父が逝った後、小太郎と父の話をすると「おじいちゃんの話しないでよ。」と怒っていた。父の死に顔を思い出して悲しくなるらしい。しかし今では「お父さんは死んだら、おじいちゃんと同じような死に顔だな、きっと。」などと平気で言うようになった。もちろん家族みんなが健康で長生きできることが願いだが、今日限りの命になるかもしれないことを覚悟しておけと常々小太郎にも言ってある。

死を理解することで、生きているもの物へのやさしさや、いたわりが生まれてくれればいいと思う。そして、生は有限であることを前向きに認識して、今、与えられている時間がいかに大切であるかを自覚することが出来ればいいなぁと考えている。

突然にやってくる別れをいつも覚悟しておきながら、別れの時は悲しく寂しい。昨年9月、私が大好きで応援していた音楽家の槙健一さんが32歳という若さで亡くなった。

彼は音楽的な才能はもちろん、人間的にも魅力的な人でこれからの活動を楽しみにしていた。彼の歌を聴くと勇気、希望が湧いてくる。そして人柄のやさしさがこちらにも伝わって、周りの人までやさしい気持ちにしてくれる。この若さでの別れとは誠に残念だが、こんな人と会えたことを感謝している。

彼が逝って早や一年が過ぎ、八月十五日の精霊流しは彼の船を担いだ。精霊船は音楽を愛した人にふさわしくギターを飾り、二十mを越す大きな船だった。百名を越えるたくさんの方達が担ぎ手となり、彼の歌を流しながら楽しく行進した。

槙さん、長い闘病、お疲れさま。
私たちを照らしてくれてありがとう。じゃぁ、またね。


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